第七食

07鍵の行方


薄暗い廊下を歩く。

両親の寝室をゆっくり通り過ぎると京子も少し落ち着いてきたようだ。

 

「管理室ってのはまた、すごいもんだな。ここは会社かよ」

入り組んだ間取りに圧倒されながら平凡な感想を述べた。

とりあえず今は二人の後をただついて行くしかない。

「まあ、ここは色々な会議の会場になったりもするの。その、いろんな部屋があって、地下室もあるわ

京子が呟く。

「地下室ねぇ

【牢屋】を何に使おうっていうんだ。

「まあ、あなたが知らないだけで人食いなんていうのは、裏の世界では盛んでしてね」

蓮さんはそう言い、扉の前で立ち止まった。

来た時とは全く、違う感想だ。この屋敷は、サバサバしていて、暗く、冷たい。

 

「ここが管理室です。入りましょう」

電気をつけるとまさしく管理室。

「私も入るのは初めて」

俺と京子が部屋のあたりを珍しそうに眺めていると、蓮さんが

「全く、面白いですね。鍵がありません。裏口のものだけ」

目を丸くしている。本当に驚いているらしい。

「おいおい馬鹿言うなよ。無いわけないだろ」

俺たちは壁にかかっている鍵を確認していったが、裏口のものだけ不自然にも抜けているのだ。

「まさか、そんな」

「部屋の何処かに紛れているかもしれません早急に探しましょうか」

「鍵がないと話にならない。京子探そう」

「うん」

何処だ!何処にある?

「探し物は以外と近いところにあったりしますからね。」

そんなふうに呑気なことを言っている蓮さんは奥の机の資料手に取り、考え込んでいる風だ。

「こんな時に限って!」

「私はこの奥の部屋を見てきます。

誰かが鍵を返し忘れたかもしれないので。お二人はもう少しここにいてください」

「裏切る気じゃないだろうな」

俺が釘をさすと、

「そうかもしれませんね。でも、奥の部屋には恐らく人がいます。今人に見つかっていいのは、私だけですからね」

そう言って悠然と歩き去った。

 

「ったく」

俺が棚の方によると、口数が少なかった京子が呟いた。

「ここには、ないと思う

「どうして?」

「なんとなく、別に散らかっているわけでもないし、普通なら複数で探せば、すぐ見つかるよ」

俺は床に腰を下ろした。

「確かに」

京子も俺に続く。

どこかの機械の音だろう。

ブーンという低い音が心を落ち着かせる。

余計なものは何もない、薄いグレーで統一された部屋は、他の部屋と比べると殺風景ではあるが、なんと言うかとても居心地は良かった。

のんびりしている暇はないのだが、蓮さんが帰ってくるまでは。

 

その時、甲高いサイレンが屋敷中に鳴り響いた。

「何の音だ!?」

廊下からこっちに向かって走ってくる足音が聞こえて、

「緊急時のサイレンです!」

息の乱れた蓮さんが扉から入ってきた。

「地下にいたおよそ二十人の人間が牢をでましたこのままでは屋敷内で暴動が起こります!」

「そんな!?」

いったい誰が

【麻酔が切れたら自力で脱出しますよ】

まさか、長谷川さんか。

「彼らは、間違いなく私たちを殺しにくるでしょう」

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コメント: 1
  • #1

    PiCO (火曜日, 10 3月 2015 14:49)

    ここまで話に見入って一気読みしてしまいました。第8食楽しみにしています。