第五食

05監禁


顔を上げ、辺りを見渡す。

牢屋のような所だ。

身動きの取れない体を懸命に動かし外側を見た。

なんだよ、これ。

実際にそのモノを見たことはないが、間違いない。

ギロチン。

重く閉ざされた扉がゆっくりと開く。

蓮さんとユリエだ。

「起きられましたか、アキラ様」

「【平沢】くん、おはよ」

平沢じゃない」

「あ〜そうだったね、京子の情報は嘘だったね。ごめん」

「俺はどうなるんだ?」

「食べるのはお嬢様が可哀想なので普通に殺すことにしました」

蓮さんが淡々と話す。

「京子は、どうした?」

「あの子はお仕置きを受けていると思うよぉ」

「お仕置きだと京子に会わせろ!」

「もう、無理ね。明日連が殺しにくるから適当に過ごしといてね」

ユリエがヒラヒラと手を振り外に出て行った。

身体の力が抜ける。なんだろう、実感がわかない。

俺は殺されるのか。

 

蓮さんがしゃがみこみ、俺の顔を覗いた。

「この件は私に任されましたので、よろしくお願いします。」

「俺が何をしたっていうんだ

「知っちゃいましたからね。私にはなんとも。」

蓮さんは隅の棚から何やら取り出し始めた。

あれはノコギリか。

「私が殺す役なんです。あの方達は自分では殺そうとはしない。シェフも腰抜けばかりなもので。いつもこういう役は私なんですよ。残念ながらね」

その時、近くからとてつもない悲鳴が聞こえた。

「なんだ!この声は」

「食料ですよ。明日の」

「は?」

「この声は坂東さんと、長谷川さんですかね。とうとうですか、可哀想に」

「何を言っている」

「ちょっとここの住人が増えますので我慢して下さいね。アキラさん」

ぐったりとした二人の男が同じ牢に入った。

「騙しやがったな、コノヤロウ!」

「そう怒らないで下さいよ、坂東さん。いい暮らしできたでしょう?死ぬ前に」

「うおぁああ、ぶっ殺してやる」

「死ぬのはあなたですけどね。まあ今日はここでゆっくりして下さい。明日迎えに行きますから」

「てめぇ!!」

蓮さんが出て行ってから沈黙が続いた。

「もう終わりだ、神様。」

五十くらいだろうか、真っ白な髪が弱々しい小鹿のような面持ちを隠している。こっちが長谷川さんか。

「神様なんぞいねぇ!」

坂東さんと呼ばれた男が怒鳴った。

そしてこちらに顔を近づけた。

「なあお前さんも騙されたのかい?」

「まあ、そんなようなものです」

「こんな若いのに心配すんなや、まだ死ねん」

彼は自分にも言い聞かせたように厚い胸を叩き長谷川さんの方へ寄った。

「明日だ。明日奴がドアを開けた時に一気に襲いかかろうそして

坂東さんの声が遠のく、視界がぼやける。

無理もないが、この体はだいぶ消耗していたらしい。

目の前が真っ暗になる前に倒れこむ二人が見えた。

 

 

男の泣く声が聞こえる。

真っ赤な部屋で長谷川さんが這いつくばって泣いている。

坂東さんは

檻の外にいた。

首から上がなくなって。

「驚きましたよ麻酔はちゃんとうったはずなのに。すごいです坂東さん

蓮さんが赤い床を拭いている。

「ギロチンでこうザクっとね、やっちゃいたかったんですが。生憎抵抗されちゃいました

場違いな、可憐な笑顔を見せて顔にできた傷をさすった。

「化け物め

長谷川さんが呟いた。彼も麻酔を打たれたのだろうか、首から下がうまく動いていない。

しばらくたたないうちに長谷川さんは意識を失った。

「あんた、長谷川さんも殺したのか

「だた、気絶しただけですよ」

蓮さんが不意に手を止めた。ギロチンはもうサッパリきれいだ。

「アキラさんにクイズです、食べる美島。調理するシェフ。殺す私。この中で犯罪者は誰でしょう?」

何を言っている?

わざわざいう必要もない。人を殺してはいけないんだ、そんな教育を受けてことがないが、誰もが分かっている。その行為はどんなことがあっても

「あんたは確実だよな」

結局言ったのはその一言だった。

「そうですね。私は罪を犯しています。じゃあソレを調理するのは?

食べるのは?」

ダメに決まっているだろ」

「言葉を濁しますねぇアキラさん」

「なんのことだよ。」

「全員犯罪者だ。とは言わないんですね」

何も答えないでいると、

「あなたは言葉にしたくないのですね。無意識に美島家いや、美島京子をかばっています。なぜ言わないのです?【美島京子は犯罪者だ】と」

不思議なことだ、この女は僕の中へゆうゆうと入り込んでくる。拒否権はない。

「でも安心してください。

日本にも人食罪はありません。

当たり前ですよね。そんな法があったらカニバリズムが日本にもいるってバラすようなものですものね。」

「あいつは食べるのをやめた」

「そうですね。もうずっと人肉を食べておられません。お辛いでしょう」

「自分から、変わろうとしている」

「健気な方だ。彼女をずっとみてきました。ずっと。私はね、京子様の事を気に入っているんですよ。」

何が言いたい?」

「私が逃がしてあげますよ。二人とも」